3Dプリンター 本気で活用しませんか

昨年くらいから、展示会もリアルで開催され活気が戻ってきました。私もいくつかの展示会を見学させていただき、最近の技術動向を肌で感じることができるようになってきました。その中で注意すべき動向の1つとして、3Dプリンターの技術が気になっています。

 仕事柄、加工を依頼する側、依頼される側両方のお話を聞く機会がありますが、3Dプリンターの活用に関して、加工を依頼する側と加工を依頼される側の考え方がどんどん開いてきているように感じることがあります。

製品開発では、開発期間の短縮に対する要求がどんどん増してきています。そのため、最近では発展してきたシミュレーション技術を活用し、試作なしで開発を進めるように変わってきています。製造・組み立てにおけるコストや品質確保を意識した設計技術も求められますが、そのようなことに配慮できる経験ある技術者は少なくなってきています。また、これまでの加工技術の制約を前提としないあり得ない形状が、飛躍的に性能や効果を増大させることがあるという設計事例も出てきています。その結果、依頼したい加工仕様は、従来の加工方法では定義できないといっても良いくらい複雑になるケースもあります。しかし、3Dプリンターは、高度な加工技術がなくとも複雑な形状の部品を作ることができる技術です。実際、製品開発を行っている会社では、3Dプリンターを設置して使っているケースはよく見かけるようになってきています。製品開発に携わる若い技術者にとっては、3Dプリンターは、ごく当たり前の技術になってきていると感じます。

 

Dプリンターを前提とした部品開発では以下のような利点があります。

l  Dプリンターでは、従来の加工方法では実現できなかった複雑な構造をつくれるため、部品の性能を飛躍的に高めることができます。例えば、内部を中空にすることもできますから、部品重量を劇的に減らせたり、強度を増したりすることもできます。また、表面積を増やす形状が取り込めれば熱交換効率を向上させるといったことも可能です。

l  Dプリンターで部品を制作することで、部品点数を減らしたり、接合箇所を削減したりすることができます。従来の加工方法ではあまり複雑な形状に対応できなかったため、どうしても部品を分解して加工し接合していましたが、3Dプリンターでは最初から1つの部品として製造することができます。一体部品にできれば、製造工程自体も少なくできますし、品質管理も軽減できます。

l   特殊な例かもしれませんが、3Dプリンターにより、部品の欠損を修復することも可能になります。現在でも溶接などで金属部品を修復することがありますが、3Dプリンターを使用すれば、もっと高度で精密な修復も可能になると言われています。

 

つまりは、今後の製品開発で部品試作を担当いただくパートナー企業には、これまでの加工技術と同じレベルで3Dプリンターを使いこなして欲しいと思うのです。しかし、3Dプリンター専業のベンチャー企業は時々話題になりますが、普通に試作を事業として行っている会社で3Dプリンターを活用している例はなかなか見かけないところです。

顧客から信頼されている加工会社といえども、高度な加工装置を保有しているだけで信頼を得ているわけではありません。3Dプリンターを使うモノづくりにおいても、3Dプリンターの使い方や、3Dプリンターの特性を踏まえた品質保証技術の蓄積も必要です。そのため普通に加工を事業として行っている会社で3Dプリンターも普通に活用している会社が増えてほしいところです。

ラボで使うような小型の樹脂用3Dプリンターは比較的安価であり、よく見かけます。しかし、工業製品を作れるような、また材質として金属を扱えるような3Dプリンターは非常に高価ですし、技術的にもまだまだ問題点も多いことも事実です。しかし、とある記事で、「東金属産業株式会社(静岡県沼津市)」では、5台の金属3Dプリンターを導入し、ヘリコプターの部品などの製造実績をだしているそうです。東金属産業は、鋳造から事業を開始し、現在では溶接や機械加工を行っている会社でしたが、最近は金属3Dプリンターも導入して、非常に複雑な試作要求にも応えているとのことです。

 

従来の加工技術では、高度な技能を備えた人材や活用方法の情報は外部からも調達可能でしたが、3Dプリンターに関してはまだまだ発展途上であるため、取り組んだ企業にしか人材も情報もありません。しかし、昨今の製品開発の試作要求は、3Dプリンターなしには実現できない案件も増えてきています。ですから、少なくとも試作案件を多く手掛ける加工会社にとっては、3Dプリンター活用の検討を開始することは必須になってきていると感じます。

 

・「5台の金属3Dプリンター使いこなす中小企業、航空や半導体で事業拡大」日経クロステックの有料記事

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02345/020800004/

 

・東金属産業株式会社 http://azuma-ks.co.jp/

 

 

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ケイデンスコンサルティング合同会社 

 

代表社員 川下敬之