スマート工場の運営体制は船内組織と似ている? ~ 設備エンジニア育成の勧め

 本当に自動化が進んだ工場は、国内ではまだまだ少ないため、目にすることは中々ありませんが、先日、そのような工場を見る機会があり、いろいろな気付きがありましたので、考察してみます。自動化が進んだ工場は、設備稼働率が非常に高く、生産性も桁外れに高くなっています。しかし、当然ながら一般的な工場で見かける機械操作を担当している人はおらず、意外にも働いている人が多くいるように感じました。

 

 スマート工場に変化した際に、どのような働き方に変わるのか、どのようなスキルが必要になるのかを日頃から考えているのですが、スマート化が進んだ小規模な工場は、小型の貨物船の組織に似たような構成になるのではないかと感じています。例えば、20名程度の船の組織は、以下のような構成になっています。

      船長:船全体の最高責任者

      甲板部:航海士が所属し、操船と荷役にかかわっている

      機関部:機関士が所属し、すべての機器を管理する

      無線部:陸や他船と交信する業務を担当(船長や航海士が兼務することも多い)

      事務部:事務や調理など福利厚生を担当しています。

 

工場では、社長の役割は、当然ながら最高責任者ですから、船長と同じです。船長の号令のもと、荒波を乗り越え目的地を目指すのと同じように、社長も事業に対して采配を振う役割があります。

航海士の役割は、工場長や生産計画担当者の役割と似ていると思います。スマート工場では生産性が高くなっているため、指示の精度やスピードが非常に重要になります。そのため、航海士と同じように、外部の情報収集に対する仕事の分量が多くなると考えられます。航海士は、天候や波の様子などのリアルな外部情報や人工衛星などからくる情報も確認していると同時に、船の各種装置の情報も確認しています。確かに、スマート工場では石油製油所や化学プラントでは、計器室のようなコックピットのような部屋が用意されていました。

事務部的な役割は、工場でも同じように存在しますが、従業員の皆さんが効率良く働くことができるよう、今まで以上に気を配ることが求められるでしょう。

しかし、機関部は、今の工場ではなかなか割り当てられていない役割だと思います。しかし、自動化が進んだ工場では、人中心の工場に比べて非常に多くの機器が配置されているため、それらを安定して稼働させ、またトラブルが起きたときにも迅速に対処する必要があります。航海上では、機器の故障は生死に関わる問題です。スマート工場でも、生産性が高まっている分、工場の安定性の維持や故障対処の時間の短縮が重要になります。工場では、このような業務は、一般的に設備保全と呼ばれる仕事ですから、機関士は設備保全担当者と同じ役割と言えます。

 

工場のスマート化においては、生産技術担当者の役割も重要ですが、設備保全担当者も同様に重要だということです。規模が大きくない工場では、専任の生産技術担当者を置くことは確かに難しいことがありますが、設備保全担当者は工場の稼働を保証するために欠かせない存在だと思います。

加工装置自体が操作する人の度量を必要とするような汎用旋盤の時代は、機械の面倒も見なければならなかったので、自然と自分の使う機械を保全する知識も身についていたかもしれません。しかし、加工装置が高度化し電子化され、IT技術を駆使して工場全体を管理するシステムで運営されているスマート工場では、このように自然と人材が育つことはないでしょう。つまり、工場のスマート化を進めるためには、並行してこのような設備エンジニアを計画的に育成することも必要だということです。

 

設備エンジニアに必要なスキルとは何かをChatGPTに聞いてみました。

      技術的な知識 設備保全には、設備の動作原理や構造、制御技術などの技術的な知識が必要です。また、最新の技術動向や情報をキャッチアップし、それを適用する能力が求められます。

      問題解決力 設備保全では、トラブルの原因を特定し、問題を解決する能力が必要です。それには、的確な判断力や分析力が必要です。

      コミュニケーションスキル 設備保全には、関係者との円滑なコミュニケーションが必要です。そのため、的確かつ適切な情報共有や報告能力が求められます。

      協調性 設備保全は、チームでの作業が多いため、協調性が求められます。また、他部署との調整や協力も必要となるため、コミュニケーション能力とともに、協調性も重要です。

      柔軟性 設備保全では、トラブルや変更要求など、急な対応が必要になることがあります。そのため、柔軟に対応できる能力が求められます。

 

以上のようなスキルをOJTで育成することはたしかに簡単ではないでしょう。しかし、人材育成を行っている講座もあるようですので、以下に紹介します。

 

      日研トータルソーシングのロボット/設備エンジニア研修

https://nikken-hozen-mainte.jp/training/

 

 

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ケイデンスコンサルティング合同会社 

代表社員 川下敬之